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夢 〜仮想と現実〜

30歳を迎えた今年。そろそろ中年なんて言葉もあてはまってくる。
ある日、久しぶりに岩崎から連絡があった。彼とは学生時代の同級生で、今では立派な中学校教師をしている。
電話の内容は、自分の担当するクラスに不治の病で入院している女の子がいると、そして最近元気がないと、そんな内容だった。
きっと彼なりに色々悩み、どうにもならないのはわかっているが、誰かに話したくて連絡してきたのであろう。
私は結婚もしていないし、休日もヒマだったので、今度の日曜日にその女の子を励ましに一緒に見舞いにいこうかと提案した。
日曜日。
岩崎と待ち合わせをし、病院に向かった。
病室にはいると、ベットに腰掛けている女の子から、
「先生ー、誰そのひと?」
と明るく元気のいい声がした。見るからには血色もよく、私にはその女の子が重い病気とはとても思えなかった。
心配することもないんじゃないか?と岩崎にふと目をやってみたが、彼は私の視線に気づくこと無く、女の子に私の紹介をしていた。
彼女の名前はさくら。14歳である。もちろん女性としてではなく、女子学生としてかわいらしい。といった印象を受けた。
外出許可もでているようなので、3人でドライブにでもいこうかという話になり、病院をあとにする。
車の中でも彼女は元気で、3人で大声で歌を歌った。
なぜか若いくせに、和田アキコの「あの鐘を鳴らすのはあなた」を知っており、大笑いしながら3人で歌う。それ、私の生まれる前の歌だよ。
カヴァーされているのを知らないおっさんの発言に笑われた。
お菓子をたべたり、最近のTVの話題を話したり、景色を見たり、普通の女子学生となんら変わりない感じがする。
元気づけるどころか、こちらが元気を貰っているように思えてくる。
楽しい時間はすぐにすぎ、夕方に病院に戻った。
岩崎が看護士さんと話すため席をはずしているときに、彼女が私に、
「もしかしたら好きになったかも〜」
と冗談っぽく言ってきた。さすがに私は少々面食らいながら、照れ笑いし、
「こんなおっさん好きになってどうすんや〜」と返答したと思う。
「だよねー。おっさんw」という軽い返しが返ってきて、場も和んだ。
私は結婚はしていないが、彼女もいるし、ましてや10代の女性に異性としての興味はない。
まぁ、彼女も若いし、色々人を好きになったりする年頃だよな〜と思った。
彼女は笑顔で見送ってくれ、私もまた今度見舞いに来るよ。という言葉を残し、その日は自宅へと帰った。
翌日の夜、岩崎から連絡がきた。
彼女が昨晩、自殺したのだという連絡だった。
楽しい思い出が胸の内にある間に・・・と考えたんじゃないかと思うと、軽い会話しかできなかった自分にどうしようもない怒りが湧いてくる。
あまりに悲しすぎる。彼女の人生は私の半分以下なのだから。
ピピピピピッ。
朝の7:10。いつものように目が覚めた。目はすこし潤んでいる。
私にはリアル(現実)で、岩崎なんて同級生はいない。さくらなんて娘も知らない。
だが、いまでも彼女の顔が頭から離れない。
仮想と現実。
人同士が関わる全てのものは、ネトゲだろうが夢だろうが「気持ち」はなにも変わらない。
記事:キュール
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